平成20年度 第3回「TA心理カウンセラー養成講座」に参加して

インストラクター 前田 美香(関東支部)

思えば、協会が「TA心理カウンセラー」という新しい認定資格の創設に向けて準備中というような記事が会報に掲載されていたのは、確か私が会員になってまだ日も浅い数年前のことでした。当時は、関心は大いにありながらも、余りにも遠くて高い目標のように感じ、「いつかはチャレンジできたらいいな」程度に漠然と眺めていたものでした。
私のTAとの関わりは、さかのぼること2004年冬の2級に始まりました。以後は2006年春に1級、2007年冬にインストラクターとなり、あるいはTA101やTA202と、いわゆる“資格の取得”としては表面的には進行しているように見えました。一方で、“TAの理解度の深まり”や“TAの実践的な活用”という面では、とまどい・焦り・確信の持てなさによるためらい等々の「できていない感」「中身が伴っていない感」が自分の中で年々沸々とふくらんできていました。そのような内面の逡巡を薄々とは意識していたものの、日常の忙しさを言い訳に直視せず、むしろ向き合うことを避けて雑事を優先し、無期延期的に先送りにしていた感があります(あらら、明らかにディスカウントですね・・・時間の構造化もできていないような・・・)。
今回の養成講座申し込みにあたっては、職場適応支援・成長支援・問題解決支援が主軸となる職業柄、TAによるアプローチを身につけることができたら必ず役に立つと考え、一念発起したつもりでした。しかし、私にとってこの養成講座期間は、実は、自己分析のやり直しや振り返り、気づきの連続でした。「仕事に有効そうだから学ぶ」などという当初の浅薄な目的意識は養成講座が始まると同時にどこかへ消えてしまい、自分自身ときっちり対峙せざるをえない逃げ場のない苦しい3か月間でもありました。
もしかしたら、このような苦しさは受講生の大半に多かれ少なかれ共通していたのかもしれないと、今になって思います。というのは、講座の中で実技トレーニングとして、お互いにまだ身についているとは言い難いつたない“TA的アプローチ”を、ぎこちなくも果敢に試みるようなTAジャンル別のロープレ実習を数多く行うのですが、そんな手探りの“模擬TA心理カウンセリング”において、涙と共に本音が吐露されるような場面や長年のわだかまりやしこりに一筋の光明が射すような場面に何度か遭遇したからです。
講座では、「クライエントに寄り添って傾聴する」というカウンセリングの基本の基本からは決して外れないようにと、時に厳しく時に優しい貴重なフィードバックを“質量共に”沢山いただきました。経験豊富な講師の先生方に恵まれ、温かく柔軟なストロークでご指導いただいた8日間でした。メイン講師を務められた先生のおっしゃる「自分自身の理解や気づきの範囲内でしか、TA心理カウンセリングを他人に活用して行うことはできない」とはこういうことなのかと、内心ハッとする体験がありました。
また、日本各地から集まった実に多様な顔ぶれの受講生同士では、昼の講座でも夜の懇親会でも多彩なストローク交換で刺激し合い、有形無形の様々なものを共有し合い、講座の最後まで支え合いながら楽しく過ごすことができました(地元のお土産品が毎回とても美味しかったデス!)。ややもすると低きに流れがちでついつい楽をしたがる私がなんとか合格できたのも、メンバーの言動に喝を入れられ、また笑顔に癒されたおかげと感謝しております。ここで巡り合えたこの出会いを今後も末永く大切にしていきたく、協会行事その他における再会の機会を今から心待ちにしています。
合格通知を受け取るということは、嬉しい安堵と共に、先生のおっしゃる「理解や気づきの範囲」をこれから深め広げ続けていかなくてはという新たな課題も頂戴したと感じています(ここに都合よくストローク経済を当てはめて「受け取らない」わけにはいきません)。現実には、仕事上ではしばしば力不足を思い知らされ、日々の子育てや対人関係では常に反省や迷いを抱きつつ暮らしている毎日です。けれども、TA心理カウンセリングという技法に触れ、何か新しい節目を迎えたような、人生のくさびを得たような、さわやかに身が引き締まる改まった気分です。技法が真に身につき自然体で活用できるようになる為には、試行錯誤も含めてひたすら実践あるのみ、また、理論が真に身につき言動ににじみ出るようになるためには、絶え間ない研鑽と深耕あるのみと実感しています。
最後に、今この会報をお読みの皆様方にも、TA心理カウンセラーへのチャレンジを是非お勧めいたします。

「TA心理カウンセラーになるためには」へ戻る